岩崎学術出版社様の新刊単行本です。
四六判、144頁、上製造本、本文たて組
イギリスの精神分析家・ウィルフレッド・ループレヒト・ビオン
講演記録の翻訳書です。
以下、本の内容紹介より引用、
本書は、“Three Papers of W. R. Bion”の全訳である。
タイトル通りビオンの三つの講演記録を収録し、
それぞれに編者のクリス・モーソンがかなり長めの、
これまで知られていなかった重要な資料も交えて解説を付けている。
最初の「記憶と欲望」は、『W・R・ビオン全集』が初出だが、
それはこれまで全十六巻一括でしか入手できなかったので、
この機会に初めて目にする読者も少なくないだろう。
「負の能力」は、後期のビオンがさまざまなところで触れている
キーツに依拠した「負の能力」概念を、まとめて論じたものである。
この二本は、どちらも英国精神分析協会の定例学術集会で
発表されていて、密接な関連がある。
それを「後期ビオン」の始まりとして捉えるのが最も適切なことかどうかは別として、
それまでの論文や書籍で示されてきた
ビオンのアプローチと異質なものを含んでいることは確かである。
それに対して最後の「崩壊、破綻、突被」は、
彼がイギリスを離れて約十年後の
一九七六年にロサンゼルスで発表されたほぼ晩年のもので、
いつもの原稿を読まずに語るスタイルを採っている。
既に論文化されているかのようにその名は知られていたが、
実際に広く読者に公開されるのは、初めてである。
ここまで。
本書に関して編集担当のH様より下記のコメントをいただきました。
……….
精神分析本、専門書です。
本書のセールスポイントは,
「ネガティブ・ケイパビリティ」を
主題とする論文が収録されていることです。
ここ数年巷で話題になっているのでご存知かもしれませんが,
これは平たく言えば「何もしない(できない)ことに堪える能力」のことで,
英国の詩人キーツの言葉をビオンが発掘した概念です。
極言すれば精神分析では「何かをすること」は
すべて「行動化(アクティングアウト)」
として「症状」とみなされますので,
「ネガティブ・ケイパビリティ」の陶冶は
精神分析の目標そのものともいえそうです。
…………
ボクにとっては上記のお言葉もなかなか難しいのですが、
ゲラの一部も拝見し、なんとか形にしたのが上画像の完成形になります。
精神分析本ですしこの本と同様に
装丁はカッチリしたデザインを目指しました。
同じグリーン系の使用画像でも構成要素(質感など)を変えたりで
階層、深層などを感じていただけたらという思いです。
また本書の書名、帯文で使用している明朝体(フォントワークス)は、
精神分析本デザインと相性良いなあといつも感じます。
知的な雰囲気で古典的香りもあり、フォルムに関してはキレがあり癖も多少ある
ので良い意味で引っかかる。英字フォルムも完成度が高いと思います。
なによりも組んだ時に美しいのでバランスがとても良い書体ですね。
今後も使わせていただきます。
コンパクトな本ですし、
「ネガティブ・ケイパビリティ」というワードに
惹かれて手にとっていただけるのも期待しながら…
本書が多くの読者のもとに届かれる事を願っております。
11.7頃発売予定
装丁担当